「発達障害」と聞くと、多くの人が子どもや若者を想像するかもしれませんが、実際には大人にも発達障害が存在します。特に事務職やデスクワークを行う職場では、発達障害を持つ同僚とのコミュニケーションや理解が重要です。この記事では、大人の発達障害についてその症状の特徴や正しい理解のポイントを紹介します。
発達障害の概要と種類
成人期に診断される発達障害には、注意欠如・多動性障害(ADHD)、自閉スペクトラム障害(ASD)などがあります。
自閉症は、「言葉の発達の遅れ」「コミュニケーションの障害」「対人関係・社会性の障害」「パターン化した行動、こだわり」などの特徴をもつ障害です。最近では、自閉症スペクトラムと呼ばれることもあります。
出典:政府広報オンライン
注意欠陥多動性障害(AD/HD:Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)は、「集中できない(不注意)」「じっとしていられない(多動・多弁)」「考えるよりも先に動く(衝動的な行動)」などを特徴する発達障害です。
出典:政府広報オンライン
主な症状と特徴
大人の発達障害には、さまざまな特徴や症状があります。大人の発達障害を理解するためには、ただその症状や特徴を知るだけでなく、それがどのように日常生活や社会で影響を及ぼすのかを理解することが重要です。周囲の人たちにとっては理解しにくい場合もありますが、大人の発達障害を正しく理解し、適切なサポートを提供することで、生活の質を向上させることができます。
社会的な相互作用やコミュニケーションの難しさ
例えば、会話の流れを理解しにくい、適切な距離感や表情の使い方がわからない、他人の感情や意図を読み取りにくいといったことが挙げられます。特に、新しい人間関係の築き方やチームでの作業、ストレスの多い状況での対応で困難を感じることがあります。また、これらの困難さがうまく理解されず、周囲から誤解や無理解を受けることもあります。
興味や活動の狭さ
興味や活動の狭さとは、特定のテーマや活動に対して強い関心を持ち、それに集中する傾向があることを指します。例えば、特定の趣味や仕事に没頭し、それ以外のことには興味を持たないというパターンが見られます。
柔軟性の欠如
予想外の変化や新しい状況に適応する能力が低く、計画やルーチンに固執し、それが崩れるとストレスを感じることがあります。例えば、急なスケジュール変更や思いがけない出来事に対処するのが苦手な場合があります。
感覚過敏や感覚過少
感覚過敏とは、日常的な刺激や環境音、光の明るさなどが強く感じられ、それがストレスや不快感を引き起こす状態です。例えば、騒がしい場所や強い香り、服のタグや繊維の感触などが不快で、集中力やリラックスが難しくなることがあります。
一方、感覚過少は、刺激に対して鈍感であることを指します。音や触覚などの刺激をあまり感じ取れず、周囲の情報を適切に処理するのが難しい場合があります。例えば、他人との距離感や物事の感覚をうまく把握できないことがあります。
診断と支援の重要性
発達障害は、子どもの時期だけでなく、大人になってからも影響を与える可能性がありますが、診断を受けることでその症状や特性を明確に把握できます。それにより自分自身や周囲の人々が抱える困難や課題の原因を理解し、適切な対策や支援策を考えることができます。
診断後には適切な支援が必要不可欠です。個々の発達障害に応じた専門家の助言やカウンセリング、必要に応じた療法や教育プログラムを受けましょう。これにより、社会的な関係や職場での適応が改善され、自己肯定感や生活の質が向上することが期待できます。
発達支援かな?と思ったときの相談先
「もしかしたら発達障害なのかも」と思ったときは、ひとりで抱え込まずに、専門の相談窓口や医療機関へ相談してみましょう。相談することで専門家の助言や必要に応じたサポートを受けることができます。まずは、お近くの精神科や心療内科を探してみて、発達障害の診断を行っているかどうか問い合わせてみましょう。
※発達障害者支援センターは、発達障害を持つ個人やその家族に対し、包括的な支援を行う専門機関です。地域の生活を豊かにするために、保健、医療、福祉、教育、労働など多岐にわたる関連機関と連携し、総合的な支援ネットワークを構築しています。日常生活、仕事、人間関係など幅広い相談に対応しています。
生活や仕事についての相談ができる機関です。就労前後の支援に加えて生活に関する支援もおこなっています。健康管理に対するサポートだけでなく、複雑な障害年金の申請や障害福祉サービスの手続きなどの相談にも応じてくれます。
※発達障害ナビポータルは、国が提供する発達障害に関する情報に特化したポータルサイトです。発達障害全般に関する情報収集が可能です。
周囲との適切な接し方
発達障害を持つ成人とのコミュニケーションにおいては、理解と寛容さが必要です。発達障害は人それぞれに異なる影響を与えるため、同じように扱うのではなく、個々のニーズや感じ方を尊重することが必要です。コミュニケーションでは、明確で簡潔な言葉を使い、相手の理解度や感受性に配慮しましょう。また、感情的な表現や意思疎通が苦手な場合でも、焦らずに時間をかけてコミュニケーションを築くことが効果的です。
また、発達障害のある人は変化に敏感で、予測できない状況がストレスになることがあります。したがって、可能な限り安定した環境や日常のパターンを提供することで、安心感を与えることができます。発達障害の人は特定のやり方でのみ理解できる場合もありますが、その個々のニーズに応じて適切なサポートやアドバイスを提供することで、より良い関係を築くことができます。
社会的および職業的適応の支援
大人の発達障害の社会的および職業的適応を支援するためには、個々のニーズに合ったサポートが重要です。職場での適応を考える際には、柔軟な働き方や環境の調整が必要です。例えば、定型的なコミュニケーションが難しい場合は、明確で具体的な指示や、予測可能なルーチンを導入するなどしてみましょう。
さらに、個別の支援ニーズに応じた専門家のサポートも重要です。発達障害の専門家やカウンセラーは、個々のニーズや課題に合わせた助言や支援を提供し、適切な対応策を見つける手助けをしてくれます。社会的および職業的な適応に向けた支援は、個々の能力や挑戦に応じて柔軟に対応することで、より良い結果を生むことができます。
まとめ
大人の発達障害について理解を深めるためには、症状や特徴だけでなく、個々のニーズに応じた支援が重要です。発達障害は一人一人異なるため、それぞれの人が抱える課題や困難も異なります。しかし、適切な理解と支援があれば、社会や職場での生活もより豊かに、安心して送ることができるでしょう。